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【PR】「精肉加工の歩留まりに革命を起こしたい」男たちの挑戦を追う

目次

食肉加工機製造メーカー各社がしのぎを削る「歩留まり」。

中でも、歩留まりが高いミートスライサーとして多くのプロセスセンターに導入されている日本キャリア工業の「マルハレススライサー」。

なぜその歩留まりが実現できているのか、開発の歴史・仕様を、当時の資料を日本キャリア工業にお借りして解説します。

発端は取引先からの依頼

1992年、まだ日本キャリア工業はスライサーの開発は行っていませんでした。

当時の社長・仲野氏の元に、取引先から既存の他社製品のスライサーに取り付ける付属品「スライス肉の折りたたみ装置」の依頼が入りました。

それ自体は2年で完成したのですが、この完成した折りたたみ装置の性能を十分に発揮させるためには、必要な条件があることに気づきました。

そして気づいたチルド肉をスライスする必要性

その必要な条件とは、

でした。

とくに最後の項目が重要で、マイナスの温度ではスライス肉が折りたためず、マイナス1〜2度でなんとか折りたためるレベル。

理想はプラス1〜2度。

しかし、当時は冷凍肉をスライスするスライサーが主流でした。

解凍時のドリップ防止や温度管理の負担を考えるとチルド肉のほうがいいことは明白でしたが、冷凍の肉でなければ、うまく切り出せなかったのです。

仲野社長は、そこで確信しました。「スライサーメーカーとしては後発になるが、“生肉が切れる、かつ折りたたみ装置を最初から備えたスライサー”があれば、市場に参入できる」と。

現在の高い歩留まりを実現するスライサーのスタートは、まずは「生肉を切る」ことから始まったのです。

丸刃からの脱却

当時も令和の今も、スライサーの主流は丸刃。

しかし、丸刃では肉が逃げてしまい、生肉を綺麗に切ることも、クズ肉を極力出さずに切ることも不可能…。

解決の糸口が見つからないある日、開発チームの技術者が、スーパーで外国製のハム切り用スライサーを目にしました。

それは細長い帯状の刃物を輪の形にして、一対のプーリーにかけ、周回させることでハムをスライスするものでした。

生肉スライサー開発のヒントになったという外国製のハム切り用スライサー

当時ヒントになったという外国製のハム切り用スライサー

そこにヒントを得て、丸刃ではなくバンドナイフを採用。

そして外国製のスライサーに足りない「プラス温度帯の軟らかい肉をクズを極力出さずに綺麗に切る」という命題を解決するべく、バンドナイフの刃先と、受刃となる筋切りプレートをわずかに接触させるという機構を加えることにしました。

理想の切れ味実現に3年の月日を費やす

この機構はのちに「はさみ作用」という呼称で社内に定着するのですが、そのはさみ作用によって、肉が薄く正確に切り出され、高い歩留まりを実現するだけではなく、美しい断面を持つ商品が生まれるのです。

これで成功かと思ったのですが、肉の脂がついたナイフがすぐに切れなくなる・運転中に破断するなど、次々と課題が現れます。

また、社内では良い結果を出していても、持ち込みテストでは惨敗。繰り返される試作とテスト。気づけば、ナイフとその周辺部で3年の開発期間を費やしていました。

歩留まりのことだけを言えば、このバンドナイフとはさみ作用という仕様で、高い数値を実現しています。しかし、それだけで理想のスライサーが完成したとは言えません。「切る」「たたむ」「並べる」という工程のうち、「切る」をクリアできただけのこと。

このあとの「たたむ」「並べる」との闘いも、ぜひ読んでみてください。

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初号機完成。まだ終わらぬ開発

【上】スライサー完成式典、【下】スライサー施策初号機

【上】スライサー完成式典、【下】スライサー施策初号機

1998年12月。

スライサー開発から5年。とうとう日本キャリア工業製のスライサーが完成しました。

数多く残った課題

しかし、当然開発が終わったわけではありません。

など、まだ課題は残っていました。

この当時のスライサーは、筒状の箱に材料となる肉を垂直に投入し、その自重を活用してバンドナイフまで供給していました。

当然切り進めるにつれて材料の肉は小さくなり、軽くなる。結果、スライス肉が切り始めは厚く、切り終わりには薄くなってしまうのです。

スライス肉の厚みを安定させようと、縦型の筒の中に一対の波状のベルトを配置し、ベルトで肉を挟んで一定量ずつ送り出そうとしましたが、挟む強さが強すぎると材料肉が損傷し、弱いと材料肉が滑り落ちてしまいます。

さらに折りたたむ際に横から出て待ち受けている針にスライス肉を投げつけるような「投げつけ方式」構造にしていたものの、それではスライス肉を定位置に整然と並べることは難しい。

課題は山積していましたが、仲野社長や開発チームは、「より良いスライサーにしよう」という熱意に満ち溢れていたそうです。

【左・真ん中】投げつけ方式によるスライス肉の折りたたみ工程 【右】材料肉を垂直に投入する工程

【左・真ん中】投げつけ方式によるスライス肉の折りたたみ工程 【右】材料肉を垂直に投入する工程

下がる会社の業績に、社内から開発への抗議も

一方で、景気の悪化によって、会社の業績は下がり続けていました。まだ日本キャリア工業において、スライサーの売上は微々たるもの。開発資金への不安などから、社内でも「スライサー開発を中止にするべきでは」といった声が上がることもありました。

かなり苦しい時期でしたが、仲野社長は、スライサーが近い将来、日本キャリア工業の柱となることに疑いを持たず、前進を決意。

研究開発資金のために農林水産省による「フードシステム連携強化・循環推進技術確立事業」に応募し、見事採用。再びスライサーの開発に着手しました。

加速する開発、苦しい別れ

スライサー構造の大幅変更

開発チームは、縦型だったスライス肉の投入口を、横型にするという大胆な発想転換で、スライサーの構造を大きく変えることにしました。

開発資金は潤沢ではなかったため、工場裏にあるプレハブで、縦型の投入口を持つスライサーをロープで吊り上げ、徐々に角度をつけながら材料肉の送り出しと投入に最適な角度を探すため、何度もテストを繰り返しました。

そして、切り出されたスライス肉を確実に捉えるため、針ドラムを採用。

外周に細かな針が密集する針ドラムは、突起がスライス肉を正確に捉え、受け渡しすることができるようになりました。

折りたたんだ美しさの限界を目指す

正確に受け渡しが可能になったものの、折りたたんだ状態の美しさは、まだ投げつけ方式の方が上。

素直に投げつけ方式を採用すればいいところですが、投げつけ方式には耐久性に課題があったのです。仲野社長は性能と耐久性の両方を高めるために、投げつけ方式を採用するより、針ドラムを改良することを選択。

バンドナイフ・ノレン・針ドラムの構造

針ドラムの課題は、針先で受け取られるべきスライス肉が、高速で回転するバンドナイフに引っ張られて、定位置に取り出せないことでした。

そこで開発チームは、「ノレン(暖簾)」と呼ばれる装置を考案しました。ノレンは、取り出されたスライス肉に、上から覆いかぶさるように待ち受け、スライス肉を針ドラムに誘導してなじませる役割を担い、これにより取り出し位置は安定。

構造の改良と同時に、制御用プログラムの開発も進みます。

このプログラムを担当したのは、県内の高校を卒業して間もない社員。

協力会社の制御担当者にはりついて知識を吸収し、それでも足りない知識を、自ら職業訓練校に通い、学び、試行錯誤を繰り返し、プログラムを完成させていきました。

最大の困難。迫られる選択

順調に思われた開発ですが、景気の波には抗えません。

減少していく売上の中、仲野社長は、社員を共倒れの危機に晒すのか、リストラを断行してその危険から逃れるのかの選択を迫られます。

苦しみ、選んだのは後者でした。

そして、この選択をしたことにより、「スライサーを完成させて、必ずお客さまの役に立つ」という決意はいっそう強まったと言います。

最後の闘い、それは「付着」

薄いスライス肉を扱う上で避けて通れない難敵、それが付着です。

スライスした肉を折りたたんで整列させるためにスライス肉を上から押さえる必要がありますが、家庭でもスライスした生肉が包丁に貼り付く、肉同士でくっついて離れないように、スライサーでも同じことが起こります。

日本キャリア工業は「まるで濡れたティッシュのよう。触れたものにくっつき、些細なことでちぎれる」と語ります。

スライス肉を押さえる、しかし付着させない部品「オサエ」を完成させるため、オサエにスライス肉が付着する様子をビデオで撮影、スローで何度も再生を繰り返し、突破口を探ります。

実にさまざまなことを試しました。

「オサエの先端を尖らせる」「オサエを薄い板材から、細い丸棒に変える」「エアーを吹き付ける」「エアシリンダを使って押さえるタイミングをずらす」…。

しかし、どうやってもスライス肉がオサエにくっついて持ち上がってしまう。

闘いの終結のヒントは意外なところに

終わりが見えない闘いに足を踏み入れたと思っていたある日、何の気なしに仲野社長が手にとった細い線状の溶接棒。

ふと、仲野社長が閃きます。「板でも棒でもスライス肉はくっつく。しかし線だったらどうだ?」

スライサーのオサエ

スライス肉を押さえるときは線の全体で、スライス肉から離れる瞬間は点になるようなイメージが頭に浮かびました。

そのイメージのままに、手で溶接棒を曲げ、オサエとしてスライサーに取り付けました。

すると、スライス肉はオサエとして取り付けられた溶接棒にくっつくことなく、折りたたまれたままの状態で綺麗に整列していました。

これなら付着に勝てると確信した仲野社長と開発チームは、このオサエの改良に取り掛かります。

副芯部をも綺麗に折りたためるよう、1本の線材から2本に増やし、オサエとスライス肉の接触面積が、線から点へと徐々に小さくなるような動きを探り出していきます。

完成したこのオサエ【上のイラスト】は、その見た目から「ヒゲ」と名付けられました。

完成、そして現在へ

ようやく満足がいく性能・耐久性を備えたスライサーが完成しました。

バンドナイフとはさみ効果、また投入口の工夫による歩留まりの高さ、スライスした肉の見た目の美しさ。
針ドラムとノレンによるスライス肉の定位置への取り出し。
ヒゲと呼ばれるオサエによる、付着せず整然と並ぶスライス肉。

「切る」「たたむ」「並べる」を同時に、しかもクオリティ高く遂行する今までにないスライサー「マルハレスシリーズ」が誕生しました。

折りたたみ装置の開発を受諾してから、実に10年。初号機の完成式典からはすでに4年の月日が流れていました。

現在第三世代目を迎え、日本キャリア工業の看板商品に成長した「マルハレスシリーズ」ですが、より一層の進化を求めて、未だに研究が続けられています。

「お客様に本当にいい製品を提供したい」「お客様の喜ぶ顔が見たい」。その思いが、あくなき探究の旅路を続ける原動力となるのです。

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日本キャリア工業の概要

所在地 愛媛県松山市東垣生町980-5
電話番号 089-973-6311
公式サイトURL https://nippon-career.co.jp/